ジェロントロジーの本

最近、「ジェロントロジーについて、おすすめの本を教えてください。」と聞かれることが、よくあります。

今回は、私のおすすめの3冊をご紹介します。

1冊目は、『東大がつくった高齢社会の教科書』(東京大学高齢社会総合研究機構:東京大学出版会)です。副題は、長寿時代の人生設計と社会創造、です。

この本は「高齢社会検定試験」の公式テキストでもあり、目次の構成が、大きく[総論][個人編][社会編]に分かれていて、ジェロントロジーの全体像がよくわかります。私が「社会の変化」「個人の心と体の健康」「社会システム」の3点で説明するベースとなっています。

イメージしやすいように、3編ごとの各章のタイトルは以下の通りです。

[総論]
第1章 超高齢未来の姿
第2章 超高齢未来の課題
第3章 超高齢未来の可能性〜課題解決に向けた方向性
[個人編]
第4章 長寿時代の理想の生き方・老い方
第5章 高齢者の活躍の仕方〜就労・社会参加・生涯学習など
第6章 高齢者の住まい
第7章 高齢者と移動
第8章 高齢者の暮らしとお金
第9章 高齢者の暮らしを支える資源
第10章 老化の理解とヘルスプロモーション
第11章 認知・行動障害への対応
第12章 最期の日々を自分らしく
[社会編]
第13章 超高齢社会と社会保障
第14章 医療制度の現状と改革視点
第15章 介護・高齢者福祉の現状と改革視点
第16章 年金政策の現状と改革視点
第17章 住宅政策・まちづくり
第18章 交通・移動システム
第19章 ジェロンテクノロジー
第20章 高齢者と法

2冊目は、『2030年超高齢未来』(東京大学高齢社会総合研究機構:東洋経済新報社)です。副題は、「ジェロントロジー」が日本を世界の中心にする、です。

この本の特徴は、一流の執筆陣が「超高齢社会では何がどう大変になるのか」だけでなく、「では、どうしたらいいのか」を具体的に示している点にあります。

各章のタイトルにも含まれているキーワードは以下の通りです。
「幸せな超高齢社会」
「豊かな長寿社会」
「健康なまま長生きできる社会」
「いきいきした街」
「頼りになる仕組み」
「新成長戦略」

副題の「ジェロントロジーが日本を世界の中心にする」という言葉に込められた本当の意味がよくわかる構成になっています。

3冊目は、『ジェロントロジー宣言』(寺島実郎:NHK出版新書)です。副題は、「知の再武装」で100歳人生を生き抜く、です。

著者の寺島実郎さんは、TBSサンデーモーニングのコメンテーター等、メディアにもよく出ている有名人ですが、骨太の著作が多い、現代日本の知の巨匠の一人です。日本総合研究所会長であり、多摩大学学長であり、多くの政府関係の委員会や民間団体の旗振り役としてご活躍です。

この本のオビは以下の通りです。
・100年をどう生きるか
・自分の生き方を見つめ直し教養をアップデートせよ!
・「ジェロントロジー」という新・学問のすすめ

さらに、著者の問題意識がよくわかる文章を抜粋して、いくつかご紹介します。

「年金や福祉などの経済的な安定の問題から、医療や介護などの体の健康に関する問題、認知症や不安といった心の健康に関する問題、さらに、高齢者の参画プラットフォーム形成まで、人間社会総体に及ぶ議論を本格的に始める必要がある。」

「これまでジェロントロジーとしてよく議論がなされてきた分野は、加齢に伴う医学や社会科学、金融などの分野である。多くの成果にもかかわらず、ほとんどは社会的コスト負担の議論に終始している。しかし、実際には高齢者の社会参画へ向けたプラットフォームづくりまで射程に含めると、極めて広い分野でん議論が欠かせないものになるだろう。一人ひとりが何をどのように学んでいくかという問題もある。高齢化社会に立ち向かうには、構想力と心構えが必要であり、これまでとは違う新しい視界が求められているのである。」

「ただ長寿社会を実現すればよいというものではない。生きるということの意味を見つめ、人間の本質を探求し、高齢化社会にむけての社会システムの再設計に挑戦しなければならないのである。ジェロントロジーの道は遠く、緒に就いたばかりである。多くの人たちとともにこの研究を深めていきたい。再言するまでもないが、ジェロントロジーは老年学ではなく、若者に希望を与えるものでなくてはならない。」

最後に、私が好きなジェロントロジーの邦訳は、ニッセイ基礎研究所さんが使っている「人生を豊かにする幸せの学問」です。