編集思考

皆さんは、「編集」と聞いて、どんなことを思い出しますか?
一般的には、本や雑誌や映像などの編集作業や編集者の仕事をイメージされる方が多いと思います。また、編集思考という言葉も、新規ビジネスや特集記事などのコンテンツを創出する(アイデアを出す)スキルの意味でもよく使われています。

私が「編集」について、最初に、深く考えるきっかけとなったのが、松岡正剛氏の『知の編集術』でした。

この本を読むと、「編集」という言葉をうんと広くとらえていて、面白いのです。たとえば、普段の会話も、学問も、芸能やスポーツも編集されていると見るわけです。言い換えると、すべての情報は何らかの形に編集されているし、さまざまな情報のいくつかを取り出して、われわれにとって必要なものとする方法なのです。

編集でいちばん大事なこととして、松岡正剛氏は次のように言っています。
「さまざまな事実や事態や現象を別々に放っておかないで、それらの「あいだ」にひそむ関係を発見すること。そしてこれらをじっくりつなげていくこと。」
「このような方法こそが、これからの人間の認知や意識のしくみにとっても、産業界や教育界にとっても、また自分の創発的な能力を開拓するためにも、かけがいのないものになりうる。」

実は、今回、私の中で、松岡正剛氏以来、久々に、待ちに待った「編集の達人」が出てきました。NewsPicksの佐々木紀彦氏です。なぜ、「待ちに待った」という表現を使ったかというと、長い間、編集という遊び心と、現実の仕事や生活をつなげるには、松岡正剛氏のアウトプットは難し過ぎる側面があると感じていたからです。(ある意味、玄人向けで一般向けでないと。あくまで私見です。)

今回は、令和元年10月に出版された、佐々木紀彦氏の『編集思考』をご紹介します。実は、この本、私の座右の書のトップにいきなり踊り出た、私的に衝撃の本です。世代問わず、全ての人に読んでもらいたいと心から思います。

この本では、「編集」の定義を「素材の選び方、つなげ方、届け方、深め方を変えることによって価値を高める手法」と考えています。この4つのステップで、素材の価値が何倍にも高まるのです。企業としての編集思考も紹介されており、とてもわかりやすい内容です。

この本のテイストがわかる部分をいくつか抜粋します。

・私がこの本で言いたいことは、たった1つ。編集思考こそが、日本と日本の未来を創るということです。編集思考を、仕事、人生、教育、経営、政治、外交などに応用することによって、日本と日本人の持つポテンシャルは一気に花開くと信じています。

・日本の企業や業界には、「縦割り」がはびこっています。この閉塞感を打ち破る武器となるのが、「横串」で物事をつなぐ編集思考なのです。

・異質なモノをかけ合わせ、新たなビジネスを生み出す。

・編集思考は批判ではなく行動、実践のためのもの。

・ニューズピックスがこれから編集する7つの領域(カッコ内は私の自作キーワードです)
 1つ目は、「西海岸」と「東海岸」です。(東京内)
 2つ目は、「老い」と「若き」です。(異世代の融合からの創発)
 3つ目は、「男性」と「女性」です。(フラットでオープンな場)
 4つ目は、「リアル」と「バーチャル」です。(官民学が集う社交場)
 5つ目は、「地方」と「東京」です。(地方の肌感覚)
 6つ目は、日本と海外、特にアジアです。(アジアでの可能性)
 7つ目は、「経済」と「文化」と「テクノロジー」(越境する人材)

・この本には、私が17年間の編集者人生で学んだ「仕事や人生や事業を楽しく編集するためのヒント」を惜しみなく詰め込みました。

私がこの本を座右の書のトップにした理由は、普段、地域社会に向き合っている中で、ある意味、取材を繰り返し、素材を見つけ、どう編集するか試行錯誤しているのですが、言語化できずに苦労していたことに対して、一気に新しい道筋が見えてきたからです。感謝の一言しかありません。

最後に、佐々木紀彦氏の『日本3.0』も合わせて、お読みください。皆さんの志や使命感を大いに刺激してくれます。

本のオビから紹介します。
・70年周期で日本にやってくるガラガラポン革命がまもなく起こり、日本は第3ステージを迎える。
・激動の時代は、「とにかく動く人」が勝つ。
・日本人よ、挑戦に身を投げろ。
・明治維新から敗戦までの「日本1.0」、敗戦から現在までの「日本2.0」に続く、「日本3.0」時代を生き抜くための必読の書。