「今、ここ、私」の2つの意味

「今、ここ、私」という言葉を近年よく耳にします。

この言葉の第一印象は、自己中心的で視野が狭い価値観、内向きというものでした。特に若い世代の人たちが、この言葉を使うのを聴くと、もっと豊かな視点を持ってほしいと感じていました。

しかし、私自身を振り返ってみると、違う景色が見えてきました。若い頃、例えば、大学生、20代の社会人のころは、受験勉強、自分探し、就職、自己啓発、海外語学研修、結婚、海外赴任と、自分のことで精一杯だったのです。
その後、30代に入り管理職になると、仕事の面でも視座が高くなり、視野が広がっていきました。

違う景色とは、別の言い方をすると、「今、ここ、私」には2つの意味があること。

一つは、「思考の枠組み」としての「今、ここ、私」。この考え方だと、自己中心的で視野が狭くなります。

もう一つは、「思考の起点」としての「今、ここ、私」。この考え方は、今現在の自分自身を深く見つめる、内省するという意味で、禅などでも重視しています。思考の起点なので、「今」は、過去や未来に広がり、「ここ」は、位置的に空間的に広がっていきます。そして、「私」は、私たちへと広がっていくのです。

この2つの意味は、どちらが正解という話ではなく、ある意味、バランス感覚に近い。両方あっていい、両方を包み込む。私たちの成長段階、年代、仕事や生活の環境変化で、その割合が変化していくだけなのではないでしょうか。

#今、ここ、私