孤独について

日本では、孤独を前向きに捉える風潮があり、孤独を楽しもう系の書籍が後を絶たない。全部に目を通している訳ではないが、大半は以下の3点の大事な論点を見落としている。言葉の定義や論点が明確でない議論は世間に蔓延しているので、要注意である。まあ、今回もその典型と言える。

1点目、
孤独と孤立の意味をごっちゃにしていること。

孤独とは主観的なもので、一方孤立とは客観的・物理的なものである。
例えば、家族と同居していても、コミュニケーション等に問題があり孤独を感じる人は多いし、一人暮らしでも近隣住民や友人との交流が活発で孤独を感じていない人も多い。

人とのつながりがあっても、居場所があっても、言語化できない不安を共有できない状態では、孤独を感じるという。奥が深い。

2点目、
人とのつながりには、「強いつながり」と「弱いつながり」があることを理解していないこと。言い換えると、「弱いつながりの強さ・メリット」が抜け落ちていることです。皆さん、実は、このことが「つながり」議論が空中分解している根本原因なんです。

例えば、高齢になりいろんな理由で心が弱っている時に、面倒くさい人づきあいを強いられることは苦痛でしかない、と言う意見があります。ここでいう面倒くさい人づきあいは、「強いつながり」のことだけ指しています。

とても大事なので、詳しく。
「強いつながり」とは、会う回数が多く、一緒にいる時間が長い、情報交換の頻度が多い、血縁関係にある、といった関係で、その逆が「弱いつながり」である。
つながりの強いネットワークの中では、お互い人となりがわかっていることから、同じ情報を得ることになり、情報流通の無駄が多い。一方、つながりが弱ければ、多様な情報を効率よく入手できると言う。
言い換えると、「弱いつながり」をたくさん持っている人は、普通は手に入らない情報をたくさん入手できます。このことは、イノベーションに通じるのです。なぜなら、イノベーションは既存の知と知の組み合わせで起こるからです。
これが、ネットワーク理論の「弱いつながりの強さ・メリット」です。

3点目、
孤独を美化することは、国際社会の流れに逆行していること。

2018年1月、英国の内閣に「孤独担当大臣」が置かれたニュースを
皆さん、ご存知でしょうか?

孤独が人の肉体的、精神的健康を損なうのは、今や世界の常識です。
肥満や1日に15本のタバコを吸うよりも、孤独の方が有害だと言われています。

加えて、孤独を美化する発言をする人に共通していることは、貧困から目をそらしていることである。優雅におひとりさまの老後を過ごすにはお金がかかります。

皆さんは、どう感じましたか?

現在、日本が向き合っている社会的課題の中でも、孤独社会への対応は、異次元の超高齢社会かつ人口減少社会の視点からも、最重要の課題の一つと言えます。